二階堂和美 nikaido kazumi

diary

2011.07.21

彼岸

台風一過で、散らかった庭には、道はさんで向こうの自治会掲示板から「花火大会」のポスターが飛んできていた。
貼り戻しに行ったら、「納涼祭」のポスターも引きちぎれて、そこらへんに散らばっていたので、なんとなくパズルがしたくなって、いったん持ち帰ってセロテープで裏から貼り合わせ、掲示板に戻した。
よれよれのポスターたちを貼り直し、倒れていた「ゴミ集積所」の看板を針金で留め直し、よしよし、見違えたぞ、とひとり満足して掲示板をにんまり眺めて、気を良くしていたその矢先。
調子に乗ってもう一働きするかと草抜きを始めた瞬間、チクッと腕に痛みが走った。
切ったのか、虫にさされたのかもよくわからないけれど、毒っぽいものが血管を回っている。あわてて、病院だ、消毒だ、とか言ってるうちに、虫さされっぽく腫れてきたので、なんだ、虫さされなら、とムヒを塗ったら数十分後に跡形もなく収まった。

刺される直前、思わず口に出してしまった言葉は「わたし、人、良くね〜?」。

・・・ちくしょー、思い上がった瞬間に刺された。
確かに、「わたし善行しちゃった〜!」って思ったさー。

ジンクスとか迷信とかはことごとく無視するほうだが、
タイミングよすぎて、まるで日本昔話の戒めのようで気味悪かった。

わりと、信じ難いことがよくある。
その人のことを何日も、「あ、手紙書かなきゃ」とか思っていると、その相手から先にメールが来たり、向こうから会いにきてくれたり。

今しがた、今度「TRUSH UP」で連載される人生相談の電話対談を終えたところ。
相手はお坊さん。5年前にお坊さんの集中講習会で一緒のクラスだった人。
2週間みっちり朝から晩まで勉強する講習の、最後のころ、その人は
「『Lovers Rock』の7インチ持ってます。」と言ってくれてびっくりした。
その後数年を経て、「TRUSH UP」の連載をしないかとその人から連絡があった。
「なぜあなたが?」と尋ねると、たまたま訪問したご門徒のおばさんから「うちの息子が変な雑誌作ってる」と見せられたのが「TRUSH UP」だったらしい。彼はその読者だった。
へえー!な話。

「TRUSH UP」といえば、連載されているDODDODOの漫画が素晴らしい。
DODDODOのカバーを一昨年、neco眠ると一緒にやらさせてもらって、
MV(最近はミュージックビデオというらしい)にも出演させてもらったが、
その曲が収録されるのと同じアルバムの、他の曲のMVを見た。
そのMVが素晴らしかった。当時も触れたけれど、素晴らしくて感動した。

「お別れの時」という曲は、去年の11月にできた。
その数ヶ月前に最初の2行だけはできていた。
そっから先、どう転がしたらいいか、見えずにいたが、
尾道へ、シネマダブモンクスに会いに行ったとき、
彼らのライブのリハ時間に、ひとり散歩しながら坂の途中で1番ができた。
会場の喫茶ハライソに戻ってきて、ライブがスタートするまでの時間で続きを書いた。

福岡の友人が亡くなった翌週だった。

彼女との別れにも重ねて書いた。

そんなことは、いまはじめて言う。
インタビューをたくさん受けたけれど、特に聞かれなかったから特には触れなかった。
自分でもそうであったことを、忘れていたのかもしれない。

もちろん、坂本くんにも言ってない。MVを作ってくれた作家だ。
それどころか、依頼の際にも、私はひとことも話をしていない。
メールも。手紙も何も。
坂本渉太くんとはまったく直接のやり取りをせぬまま、
だが、坂本くんにこの曲のMVを作ってもらいたい、というのは最初から決めていた。
彼の連絡先を教えてとカクバリくんに言ってるあいだに、
カクバリくんがオファーをしてくれ、
その後再三頼んでも、カクバリくんがなかなか連絡先を教えてくれなかったので、
そのまま進んだ。
そのまま進んで、もう何ヶ月も経ってから、「女はつらいよ」を作ってくれた伊藤ガビンさんにその話をしてたら、「話します?」と言われ、ガビンさんの電話でようやく挨拶した。
でももう、この期に及んで何かを言うのはヤボだなと言う時期に来ていたので
「信じて待っています。そのまま進めてください。」とだけ言って
さらに待つことひと月余り。
待ちに待った上映。
大笑いして大泣きした。

「お別れの時」ミュージックビデオ 制作:坂本渉太

カクバリくんが連絡先を教えてくれなかったのは正解だったのかもしれない。
話す必要はなかった。
話してないのに、これができてしまった。

予想外の物語が展開して行くのが面白かった
ストーリーは予想外ではあるが、根っこは見事に、
まさしくそれです、という世界だった。

その世界がみたかった。
時折フォーカスされる花々の顔があまりに無邪気で、
突っ伏してしまいたくなるほどの嗚咽を誘う。

おーん
おーん
あははははは

アニメーションというのはすごいな。
世界が、現実を離れる。
あっちの岸に飛躍する。

坂本くん、頼まれてくれてありがとう。

そして、そして、おくればせながら、
『にじみ』を早速手に取って聞いてくれている皆さん、
本当にどうもありがとう!!!!!!!!!!!!!!!!!!!