2009.11.01
『電信柱エレミの恋』
この映画、参加させていただいてるわけではないですが、コメントを書かせてもらいました。
とてもいい作品だったので、ここでもご紹介させていただきます。
10月31日より恵比寿の写真美術館で公開中です。
京都でも、烏丸のshin-biにて、上映されるようです。(11/13・14・15の3日間のみ)
是非見に行かれてください。
原作の井上英樹さんは、昨年ダブルフェイマス繋がりで知り合わせてもらって、今年4月、滋賀尾賀商店でのイベントや、『ソトコト』でのインタビュー、8月の楽譜プロジェクトの裏方などなど、いろんなところでお世話になっていて、会うたび、私にいろいろと面白い本やエピソードを紹介してくれる。その井上さんがこんな素敵なお話を書いていた。
「電信柱」という言葉、意外だけれど、ここ数年口にしたことはなかったし耳にもしていなかったように思う。代わりに「電柱」を使っていた。「電柱」が「電信柱」になったとたん、電信という、伝える役割のために存在している感が強まる。そしてその語感。「デンシンバシラ」。なんてまどろこしく、リズム感のいい単語だろう。こんな美しい日本語を私はこの数年忘れていたなんて、もったいなかった。主人公のエレミの口から、この「デンシンバシラ」という響きがつづけて2回出てくるシーンがある。クライマックスではあるが、なぜかこの単語の面白い響き故に、滑稽にも聞こえてしまうのだけど、そのアンバランスさが、余計に私を揺さぶった。ともかく、感情移入しすぎて泣き疲れた。彼らの顔だけで泣けてくるから困る。電信柱と人間の恋なんていうと、なんだかファンタジックに聞こえてしまうかもしれないけれど、しがらみの中で、それでも精一杯、なし得る限りの術と誠意を総動員して、相手に”伝える”ことに全力を注ぐ姿は、決して私たちの日常とかけ離れた事ではない。私など電信柱に負けている、と思った。人間なのに。口もきければ手紙も書ける。会おうと思えば会えもするのに。わたしはこの映画から勇気をもらいました。それにしても、どうして一目惚れってするんでしょうか?
ついでに井上英樹さんのインタビュー単行本、「ぼくのしょうらいのゆめ」も紹介しておきます。とてもおもしろいです。わたしは人の話を聞くのが好きです。直接ご本人に話を聞くのはもちろんすばらしいけれど、緊張するので又聞きが好きです。だから面白い話を聞き出してくれるインタビュアーさんたちを尊いなあと思います。
ぼくのしょうらいのゆめ