つれづれにか vol.8
掲載:QUATTRO PRESS vol.55
このアルバムを完成させるまでに3年余りかかった。人をまきぞいにしていたから続けられたというところがある。半分くらいのデモは2003年の半ばには出来ていた。そこからは曲の熟成期間。そして人間も。ようやく完成した。『二階堂和美のアルバム』。
子供の頃多大な影響を受けた松田聖子さんらアイドル全盛期の歌謡曲、いわゆる懐メロといわれる昭和の流行歌、それらの良さに改めて気づいたとき、うらやましく思ったことは歌手は歌手であるということ。歌手は歌い、作曲家は曲を、作詞家は詞を作る。そして編曲は編曲家が。それぞれのプロフェッショナルが集結してひとつの曲を作り上げていく。その手法に私はとても励まされた。
自分一人だとくじけてしまいそうになる時がある。もちろん共同作業で嫌になることもあるだろうが本当に信頼している人たちと仕事をしていたら乗り越えられる。そしてその人たちへの責任を果たす気持ちにもなる。
みんながいてくれてようやく『二階堂和美のアルバム』が作れた。ゲストとかコラボレーションとか、そんな軽いはずみではない。みなさん一流の職人としてこのアルバムに関わってくださった。アルバムのプロデュースと全曲の作詞、共同作曲を請け負ってくれたイルリメこと鴨田潤、録音・ミックスで大きく支えてくれ、鶴の一声を何度も投げてくれたイリシット・ツボイ。そして私たちのやろうとしたことを私たちが期待した以上の解釈をもって仕上げてくれた親愛なる音楽家の面々。それを見守ってきてくれた家族や友人たち。待ってくれている方々。
その制作期間中に東京から広島に住居を移した環境の変化、そして心の変化も、このアルバムの中に詰まっている。わたしはこの一枚を本当に大切にしていく。