二階堂和美 nikaido kazumi

library

つれづれにか vol.48

掲載:QUATTRO PRESS vol.94 / PARCO-CITY FLYER 2010 February

 oorutaichi、doddodo、neco眠るを迎えて@広島クアトロでお送りした年末の”堂脈”、みんなみんなほんとにありがとうございました!デビュー10周年を機に始動した”堂脈”は、私がほんとに好きな友人を広島に呼ぶという趣旨のイベントですが、今回初広島だった3組がほんとにいいライブをしてくれ感動しました。これからもいいものいろいろ紹介していくから楽しみにしていてくださいね!Q48yokocine_s.jpg
 さてそんな昨年、同じく10周年を迎えていた同志が広島にもうひと方ありました。広島の誇りとして私が一番信頼を置いている場所であり人である、横川シネマ(以下、横シネ)。なんとこのほど「横シネ友の会」によって10周年記念本『横川で映画を見るということ』が刊行されたのです。わたしも稚文を寄稿させていただきました。思い返せば2005年、東京から故郷である広島に居を移したものの、イベンターにもレコード店にも全くコネクションがなかった私にとって唯一の業界の知人、それが同じ時期に東京から異動で広島クアトロ担当となった当時のブッキングマネージャーの菊池さん。一年越しで私の広島での初ライブをクアトロで企画し、その宣伝に訪れたボンバー石井さんのラジオ番組で出会ったのが横シネ支配人、溝口さんでした。ここらへんの話は上記の本の中でも触れているので割愛しますが、まあそんな横川シネマ。ここ数年はライブの開催場所として認知しておられる方も少なくないかもしれませんが、本来はあくまでも映画館。私は映画館としての横川シネマを伝えたいのです。もぎりも、上映技師も、ブッキングも運営も、すべて一人の男がやっている、全国でもまれにみる個人の映画館。だから冒頭で述べたように「場所であり人である」といいたくなるわけで。ソロで、特定のレコード会社や事務所にも属さず、いわゆるインディーズでやってきた私にとって、横シネのその姿はまさしく同志。都会から地方に移り、内心不安だらけだった当時、横シネの存在がどれだけ私を励ましたことか。”地方”であることに甘んじず、かといって外向きに誇示するでもなく、ただ確固たる信念と自信をもって、ひょうひょうとそこに在る。同志として尊敬し、常に意識する存在である横シネ。広島に横シネがあってほんとによかった。広島という町を背負う気負いも、それだけの甲斐性もないけれど、私たちは何かに突き動かされてやっている。それは自分たちにとって、最も好きで、かろうじて自信のあるものだから。小さくとも大きくとも、それが我が人生の歩みであるのです。

index