二階堂和美 nikaido kazumi

library

つれづれにか vol.26

掲載:QUATTRO PRESS vol.72 / PARCO-CITY FLYER 2008 April

 『徹子の部屋』に出ていた徳永英明さんが、美しい声を保つ秘訣を問われ、「しゃべらないことです」と答えていた。「使わないことです」だったかもしれない、忘れたが、その応えを聴いた瞬間に、俄然親近感をおぼえた。全く同感です。彼はツアー中は常にマスクをして、打ち上げも行かず、極力しゃべらないようにするという話だった。5,6年前私も、風邪をひいたままライブでシャウトし、打ち上げと移動車中でも調子に乗ってしゃべっていたら、帰宅する頃には完全に声が出なくなってしまったことがあった。耳鼻咽喉科に行ったら、とにかく使うな、と言われた。そこから2週間くらいは筆談生活。朝日美穂さんに聞いた話では、実際に声に出さなくても、音楽を想像するだけでも声帯が動いてしまうから、それもしない方がいいとお医者さんに言われたという。その後、声に関するいくつかの本を読んだ中で、声は消耗品、と書かれているのを見た。声は消耗品。かなりショッキングだったが実際につぶれてみると身にしみる。しかしもちろん練習やウォーミングアップというのも必要で、そのあたりはスポーツ選手ときっと同じだろう。徹子にもどるが、黒柳徹子さんがその時切り返したのは、以前オペラ歌手の島田祐子さんに聞いた話では、彼女たちオペラ歌手は地声を使わないようにするという。子どもを叱るときも、例のオペラ調の声で叱るのだとか。それも思い当たる節がある。無理のない声で歌う時は半日くらいは続けて歌っていられるが、おしゃべりをしていると1,2時間でため息に変わる。地声のほうが腹筋や体力は省エネしている感があるが、声帯は歌うときよりも押しつぶされた形になっているのかもしれない。常に歌うときの声の感じでしゃべっていれば、なんとなく会話の雰囲気も美しく気取ったものになるだろう。それがよそよそしくならないくらい定着するまで実践してみたいものだ。文章が詩のような人はそういう人なのかもしれない。
 徳永氏はその日、47才の誕生日と言っていた。私は消耗品の寿命をどこまでのばせるだろうか。
おしゃべり禁止

index