二階堂和美 nikaido kazumi

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つれづれにか vol.16

掲載:QUATTRO PRESS vol.62 / PARCO-CITY FLYER 2007 May

 先日、衝動的にミニ・コンポを買った。この20年くらい、オーディオがらみの機械は、アンプ、プレイヤーなど、それぞれ単体のものを組み合わせて使っていたので忘れていた感覚だったが、リモコンというのは非常に便利ですね。遠隔操作。しかもタイマー予約などが出来て、目覚まし代わりにオーディオが鳴らせるとは。そうこれこれ、高校生の頃は使っていました。当時の朝はピストルズのカセットがかかっていました。この懐かしい感覚が春になかなかよい感じ。
 オーディオを単体機械で使い始めたのは、父が若い頃作ったという真空管アンプとスピーカーの、見た目の良さに惹かれてだったと思う。裸電球のようなものがむき出しになってオレンジ色を照らす、そのルックスに惚れた。ボリュームはMAXを基準にそこから絞って調整、その感じがまたよい。音ももちろん、何を聴いてもいい具合に聴こえてしまう、まろやかな質感。しかし、つなぎたいソースがたくさん増えてきて、やっぱりちょっと不便になって、端子の多いアンプを導入し台頭させた。自分が音楽を作るようになると、いい音で聴くことに慣れてしまうと、陶酔しすぎて何をするべきなのかわからなくなるので危険。ストッパーをかける気持ちもあったか、あまりいい音環境にこだわらないようにしていた。しかしそんな日々の中で、いつしか音楽を聴く楽しみさえおあずけしていたのかもしれない。先日とあるジャズ喫茶に入って目が覚めた。そこで黒いベストに蝶ネクタイのマスターがかけたビリー・ホリディは、今までで最高だった。ながら聴きなどできない、音楽を聴く楽しみを味わった。なるほど、ジャズ喫茶ってこうやって利用するものなんだ。
 そして最近、父はまた急に思い立ったらしく、スピーカーを作り始めた。何十年も前に買ったスピーカーの中身が片方だけあったのを、同じ型番のものがまだ売られている事を知り、それを取り寄せたのが2年くらい前、それからまたしばらく寝かせてようやく先月、外側の木箱を作り始めた。そして先週、また新しい組み合わせの音が鳴るスピーカー1組が完成した。
アンプ

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