二階堂和美 nikaido kazumi

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つれづれにか 番外編

掲載:PARCO-CITY FLYER 2010 DEC

 表紙を飾らせていただくことのできぬまま最終号を迎えるとは、なんとも残念です。いやいやしかしながら、全国のパルコ他多くの店先に置かれるFlyerにコラム「つれづれにか」連載をさせていただけたのは、誠に光栄なことでした。音楽とファッション、書籍に映画に美術・・・。Flyerの話題は多彩で軽やかで、とっつきやすかった。まさにポップだった。パルコに洋服を買いに来ただけの女の子も、Flyerをみておけば一通りのポップカルチャーを知ることができた。今何が売れているか、誰が人気があるか、何となくわかった。そう、逆に言えばFlyerに載るということは「売れてそう」感があった。だからその一角にスペースを与えられたことは私を少なからずよろこばせた。
Flyer最終号耕す.jpgのサムネール画像 各地のクアトロのライブスケジュールを見る時間感覚も面白かった。アーティストの移動行程を感じることができたし、ブッキングから街のカラーを想像するのも楽しかった。そんな中で広島クアトロは空いている日が多いことをどのくらいの人が気にかけてくれていただろうか。またそれをどう見ていただろう。私の今住んでいる広島。一見すると素通りされていそうでも、ANVILやアルゼンチン音響派、cononoNo.1等々、他の街では開催のなかったツウな音楽が広島クアトロには来ていた。
 中央との連携は大きい。しかし地方それぞれのカラーも大事。私も広島に戻ってきて6年目、未だここがホームとは思えないが、今は土壌を耕す時期。原爆で、植物が生えないと言われたこの街にも、力強く芽が出て育っている。奇跡のリンゴと言われる、青森は木村秋則さんの無農薬リンゴも、土をふかふかにすることで、不可能を可能にした。何年もかかること。あせらず、耕すことで、今後この街にどんな奇妙な果実が実るのか。「どれどれ?」とたまに思い出して遊びに来てください。他のどこの街でも、その土地の土に、それぞれの樹木が育って実っていくことを楽しみに、この最終号を見送ります。ありがとう!Flyer!

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