二階堂和美 nikaido kazumi

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つれづれにか vol.13

掲載:PARCO-CITY FLYER 2007 January February

 新大久保の書店でふと立川談志の著書を手に取る。書中の「歌謡曲は恋愛の応援歌」との言葉が胸に残る暮れの夜。
 とある雑誌から2006年の10曲を選んでくれとの依頼をいただいた。8曲まではなんとなく思いついた。あと2曲。CDの棚やパソコンの中の音楽データなどを一通り眺めてその年の出会いを振り返りつつ1曲ピックアップ。さてあと1曲。そこで歌本を開く。ウタホン、というのはあれです、歌謡曲の歌詞にコードが書いてあるぶ厚い冊子。パッと開いたところでピンときた曲を拾うことにする。5回くらいページを開いたところでなんとなくひっかかる曲があった。松山千春さんの「恋」。談志師匠の言葉とリンク。
歌本 恋 さて、その「恋」という歌、歌ってみようとコードをギターでならしてみても、細かいところの歌い回しがわからない。う~ん、とCD棚に手を伸ばせば、やった~持ってた~!やっぱり持っておくべきはヒット曲集。持っておくべきはヒット曲。曲を確認後、二階堂和美風にこれを歌ってみたが、どうもしみったれて聞こえていまいち。いろいろ試した結果、松山千春風に歌うことで、もっともこの曲に感動を含ませることができた。ものまねというコミカルさを抜きにして言えば、あの朗々としつつも、力の押し引きまろやかな歌い上げ方が、やはりこの曲の歌詞との一番美しいバランスを作っているのだ。
 悲しい歌は笑いながら歌う方がよりその悲しみが深く味わわれる。楽しい歌は思い切り楽しそうに歌えば、やはりその裏にある影を感じさせる。悲しい歌詞を悲しそうに歌うのはコミカルにしたいとき。だから本当に悲しいときは、ひとりで悲しい歌を思い切り悲しく歌うと笑えてきてよい。

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