つれづれにかvol.4

~レコーディング記:渋谷毅さんと蓮の花~

 買ったり頂いたりしてしばらく開けずにおいて、数ヶ月も半年もしてひょっとしたある日、ようやく開封にありつき聴くに至る。CDにはそういう事がよくある。あの透明フィルムを開けるのがなかなか面倒くさい。あれを剥くのに失敗してケースのかどを割ることがしばしばある。あのフィルムのために後回しになる新品CD。しかしCDRでなくてCDとなると、やはりきちんと聴こう、という気持ちになる。一枚通して聴く時間がとれたときにようやくデッキに入れ、紅茶など飲みながら聴く。MP3プレイヤーなどで聴く時にはアルバム一枚が終わると自動的に次のアルバムに移るが、一枚が終わったときに静かになる良さにも改めて感じ入る。そっかーこういうアルバムなんだー、と味わう余韻がある。
 現在新しいアルバムのレコーディングの真っ最中。
 渋谷毅さんのピアノに花が咲いた。蓮の花がひらくのが見えた。私のアルバムの録音で弾いてもらったピアノ。東京湾のほとりのスタジオで、二人で同時に録る。渋谷さんのピアノと私の歌だけ。単純なコードのループだが、ドラマチックな曲。そのピアノソロの部分で渋谷さんが咲かせた花は、お釈迦様も座ったという蓮の花だった。大輪で重みがあって、それが音とともに3つ、順にひらいた。感動した。確信とはこういう事か、と思った。実際の蓮の花の開花シーンは実際にもテレビでも見たことがないが、私は渋谷さんの音を聴いてそれを見た。

掲載:QUATTRO PRESS vol.51
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